モノマネ
とある方のfacebookでコメントが流れてきた。
「モノマネですね」
あるショップの商品紹介&販売ページに向けられたコメント。
商品を見てビックリした。
メーカー在籍時に一緒に仕事をさせてもらったことのあるデザイナーさんの考えた製品と構造がそっくりで、多少見た目を変えた製品がそこにあった。
モノマネという言葉を使っているが、元の製品を知っている人から見たら完全にデザインの盗用だ。
コメントを書いた方からもデザイナーさんからもこの製品の開発話を聞いた事があるため、非常に悲しい気分になった。
しかも、そのページには好意的なコメントや、既に購入した旨のコメント、実際に使っていると言うコメントが書かれている。
デザインの盗用を知らずに買っているのだろうが、もし知っていたら・・・それでも買う人は多い。
「大手だから」「有名企業だから」「安いから」という理由でデザイン盗用と知っていても買う人が多い。
メーカー(開発側)と消費者との間に入る 卸売り(問屋)・小売り業界もデザイン盗用製品だと知っていて扱う店が非常に多い。
盗作製品を実際に作っている人・場所は外国人であり外国ではあっても、それを作らせているのは日本人だ。
世の中にまだ無い製品を作るとき、大抵の工場や職人の方々は嫌がる。
作れるかどうか分からないし、お金になるかどうかも分からないから。
それなら、既に販売している製品の量産をしていた方が楽だしお金も入ってくる可能性が高い。
その中でも、なんとかしようと手伝ってくれる工場や職人の方がいるから製品が消費者の手に届く。
開発側はアイデアがカタチになるまで、何度も失敗や試作を繰り返し、その回数・かかった時間だけ開発費も膨れ上がる。
だが、デザイン盗用製品を作るのはとても簡単だ。
売っている製品を一つ買って工場に持ち込む、たったのこれだけ。
試作も恐らく1度で済むため、殆ど開発費もかからない。
構造やデザインが分かっていれば作り方も分かるので工場は嫌がらない。
数週間あれば量産される。
今回 facebook で見た製品は、デザイン盗用だけでなくかなりあくどい事もしていた。
「実用新案登録済み」
※実用新案とは日常生活の中で感じた不満点を解消するアイデアがお金になる」という触れ込みで、発明の入門書でも大きく取り上げられる産業財産権の一つ。
盗作された製品は、特許を取りたかったがある一部分が理由で認められず特許取得出来ずに販売をスタートさせたと聞いている。
それに対して、盗作製品は実用新案登録済みと謳っている。
プロダクト(製品)の世界において権利を守る為に出来る事は大きく分けて3つ。
特許権・意匠権・実用新案
盗作製品の開発側をあくどいと思ったのは、この3つの中で実用新案登録済みと謳っているからだ。
特許権が取れたのならまだしも、取得したのは実用新案だ。
先にあげた3つの権利、同じ特許庁の管轄だが特許権と意匠権は審査方式なのに対して、実用新案は登録制。
つまり、審査無しで実用新案は取得が可能なのです。
その結果、特許取得していない元の製品と実用新案を取得した盗作製品が現状どういう立場にあるかと言うと、特許が取れなかった元の製品は実用新案を取得している盗作製品の開発側に権利侵害だと言われる可能性がある立場になっているのだ。
他社のアイデア・デザインを盗んでおいて、それを自らの権利だと主張している。
本来、逆でなければならないどころか、盗作した側が盗作された側を権利侵害として訴える事が出来る状態にある・・・
さすがにこの盗作側が訴える事はしないと思う。
なぜなら、恐らくこの実用新案登録済みの文言は一般消費者に向けたものであるから。
この先溢れるであろうコピー製品の中で、自分たちが先に開発したという風に見せることが出来るし、実用新案を知らない人には「なんだかすごそうな製品」と思ってもらえる。
テレビでは中国の模倣品をよく取り上げているが、実際は中国より日本国内の方がデザインの盗用は多いと感じる。
消費者にも出来るだけ模倣品やデザイン盗作製品は手に取らないで貰いたいと願う。
最後に。
モノマネですね。この一言で思い出したことがある。
メーカー在籍時、社長含めた開発会議で同僚のデザインについて意見を求められた時に「どのデザインも他社のモノマネだから良くない」と言ったら社長から酷く叱責され、会議のメンバーから外された。
模倣品の開発には関わりたくないので良かった。
「モノマネするくらいならモノマネされた方がマシ」
普通のデザイナーはみんなこう考えると思う。
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